一般的に身近にある事物ほど、ごく狭い範囲でしか理解されていない事が多い。
わが国では教育楽器として広く認識されているリコーダーであるが、意外にもその歴史は古く、 楽器としてのルーツは中世のヨーロッパにまで遡る。
我々がよく目にするプラスチック製のそれはバロックと呼ばれた時代の楽器を模しており、
その前時代である中世からルネッサンスに掛けてのものはよりシンプルな構造を持っていた。
当時の絵画や彫刻には多数描かれており、 また、文豪シェイクスピアの「ハムレット」には「嘘をつくより簡単に吹ける笛」として登場しているぐらいであるから、
この楽器か当時、人々の生活に如何に寄り添っていたかを伺い知ることが出来る。
リコーダーの語源は本来、記憶、録音と云ったものだが古いイギリスの言葉では「小鳥のようにさえずる」と言う意味もあり、
実際に小鳥に歌を教えた記録もあるばかりか、そのための曲集(小鳥愛好家の楽しみ 1717年)も現存している。
最古の教本は1535年にヴェネツィアでガナッシによって著された「フォンテガーラ」で、
その記述内容から察するに当時のリコーダー奏者の技術水準は我々の想像をはるかに超えており、
高度なワザを持ったある種の職人と言っても決して過言ではないであろう。
また、作曲家や製作家との関わりも重要で、バロック時代の終焉に至るまで名曲の誕生は、この三者の協同作業無くしては語れない。
しかしながら古典派と呼ばれた次の時代ではリコーダーは歴史の表舞台から消え、再びスポットを浴びる20世紀の古楽復興運動まで、
一民族楽器として細々と生き続けるのである。
仮に土で出来た壺状の笛をオカリナと称するのであれば…その起源は計り知れない程遠い昔の事になるであろう。
日本では弥生時代の土笛が有名であるが、中国には更に古い時代のそれが存在するし、世界中でこの土笛は見られる。
私達がよく目にする12穴のオカリナは実は日本で改良されたもので、その直系の先祖は19世紀のイタリアでドナーティーが考案したものにまで遡る。
因みにこのオリジナルを踏襲しているのがメナーリオと云う本国本場のメーカー。
世界的に見ると、現在、楽器としての完成度は台湾、中国が世界最高水準で日本がそれに追随する形。
特に日本では様々なニーズに対応した製作家のコンセプトが楽器に反映されているようである。
オカリナの語源は(伊)ガチョウ。
リコーダーと同じく、鳥に縁があるのは面白いが楽器も奏法も発展途上で、音域を広げる為に吹き口の複数あるダブル管やトリプルのタイプも作られている。
通常タイプは大小様々でリコーダーのように吹けば直ぐ音が出るのでイージーに考えられがちだが、
根本的な難しさは他の管楽器と同じで特にピッチコントロールはリコーダー以上に難儀である(笑)。
併しながらこの不安定さが逆に柔軟性をもたらし、様々なジャンルに対応する不思議な魅力を持っている…と僕は思います。
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